国枝慎吾がウィンブルドンで初優勝!車いすテニスのルールや用具について

国枝慎吾がウィンブルドンで初優勝!車いすテニスのルールや用具について

2022年7月10日、テニスの4大大会の一つであるウィンブルドン選手権の車いすの部・男子シングルスで国枝慎吾選手が4-6、7-5、7-6の大接戦の末、悲願のウィンブルドン初優勝を果たしました。今回で50個目のグランドスラムタイトル獲得となった国枝慎吾選手は、今回の結果を受けて、全ての4大大会とパラリンピックで優勝したことになり、生涯ゴールデンスラムという偉業を達成しました!

そんな国枝慎吾選手の活躍で再び注目を集めることとなった「車いすテニス」。今回は、車いすテニスの歴史、ルールや用具、大会スケジュールについて調べてみました。

車いすテニスの歴史を知る!

テニスはヨーロッパ発祥と言われていますが、車いすテニスの場合はどうなのでしょうか。

車いすテニスのはじまり

障害者がレジャーとして車いすテニスを楽しむことは以前からありましたが、本格的な競技スポーツとなったのは、1976年。アクロバットスキーの選手だったブラッド・パークスさん(アメリカ)が競技中の怪我が原因で下半身不随となり、既に車いすテニスの経験があったジェフ・ミネンブレイカーさんとともに競技用車いすの開発を含め、車いすテニスを競技スポーツとして成立させました。

1977年春、ブラッド・パークスさんアメリカ西海岸でエキシビジョンマッチを開催。これを受けてロサンゼルス市が選手20名が参加する初のトーナメントを実施しました。1980年にはアメリカ車いす財団(NFWT)が設立され、初の全米オープンが開催。アメリカ国内各地でツアーも行なわれました。

車いすテニスの国際化

1981年、競技としての車いすテニスの国際普及を目的に、車いすテニス選手協会(WTPA)が設立されました。アメリカの各地を転戦し、全米オープンでチャンピオンを決める大会となる「グランプリサーキット」も始まります。その後、ヨーロッパでも国際トーナメントが開催されるなど、車いすテニスは国際化を進めていきました。

日本での車いすテニスの普及

日本では、海外で車いすテニスに触れた人たちが日本で普及活動を行い、1985年には、福岡県飯塚市で飯塚国際車いすテニス大会(ジャパン・オープン)の第1回大会が開催されました。2006年のウィンブルドン男子ダブルスで初優勝、現在グランドスラム車いす部門で男子世界歴代最多となる計50回(シングルス28回、ダブルス22回)優勝の記録保持者となった国枝慎吾選手の活躍により、日本国内での車いすテニスの認知度が高まりました。

車いすテニスのルールを学ぼう!

車いすテニスと普通のテニスと異なるルールは、「2バウンドでの返球が認められている」というだけで、それ以外はテニスと全く同じルールです。2度目のバウンドはコート外でもアウトにはなりません。健常者と対戦、または組んでプレーする場合は、車いすを用いる障害者のみにこの2バウンドルールが適用されます。

車いすテニスの競技クラス

車いすテニスは、下記の4つのクラスに分かれています。

  • 男子
  • 女子
  • クァード:四肢麻痺(quadriplegia)の略で重度の障害を持つ選手
  • ジュニア:18歳未満の選手

上記4つのクラスには、それぞれシングルスとダブルスがあります。クァードは性別による区別が無いため、ダブルスで男女ペアでの出場も可能。また障害者が健常者と組むダブルスをニューミックスダブルスと呼んでいます。

車いすテニスではサーブ、ストローク、ボレーなどの一般的なテニスの技術の他に、車いすを素早く正確にコントロールするチェアワークが必要となり、このチェアワークが勝敗の鍵を握ると言われています。

車いすテニスの用具や設備を紹介!

車いすテニスで使用するラケット、テニスボールなどの用具、またテニスコートはテニスと同じものを使用します。競技用車いすは、素早く方向転換させボールを打ち返すポジションにつけるように軽量で、車輪の上部が八の字のように傾斜しています。これらの専用車いすには小さな補助輪もついています。

腕の筋力が弱い選手もいるクァードクラスでは、ラケットと手をテーピングで固定することが認められています。競技中、障害のために体温調節が難しい選手に配慮して、日よけや氷の準備など暑さへの特別な対策も求められます。

車いすテニスの大会年間スケジュール!

2022年度、男子プロテニス協会が主催するATPツアーは全76試合、女子テニス協会が主催するWTAツアーは全78試合を予定しています。車いすテニスの場合、年間試合数はどのくらいなのでしょうか。

UNIQLO車いすテニスツアー

ITF車いすテニスツアー(ITF Wheelchair Tennis Tour)は、国際テニス連盟(ITF)公認の車いすテニストーナメントの総称で、1992年に11大会から始まり、2022年度は36カ国151大会(ジュニアシリーズ含む)が行われる予定です。大会スポンサーはユニクロとなるため、UNIQLO WHEELCHAIR TENNIS TOURとされています。各大会は、会場をはじめ、ドロー数、有資格審判、賞金金額、バリアフリー設備の有無など、その運営規模により下記のグレードに分けられています。

グレード主な大会名賞金
グランドスラム全豪オープン全仏オープンウィンブルドン選手権全米オープンAUD200,000 ※全豪オープン
スーパーシリーズメルボルン・オープンケイジャン・クラシックジャパン・オープン他USD45,000
マスターズシリーズNECシングルスマスターズダブルスマスターズUSD132,000
ITF1シリーズビクトリアン・オープンITFジョージア・オープンベルギー・オープン他USD32,000
ITF2シリーズバーミンガム・クラシック楽天ジャパンオープン他USD22,000
ITF3シリーズフランダース25台北オープン他USD14,000
フューチャーズシリーズシドニー・オープンDUNLOP KOBE OPEN他USD3,000
ジュニアシリーズ全米オープンジュニア他

2022年日本国内のITF国際大会

日本国内でもITF国際大会が開催されていて、今年度は6大会が予定されていました。しかし、4月19日から開催のジャパン・オープンは中止となり、その代替大会として飯塚オープンが開催されました。8月18日からは神奈川県厚木市、9月22日からは大阪府・大阪市でフューチャーズシリーズの大会が開催されますので、車いすテニスを見ていたい方は是非足を運んでみてください。

開催日大会名開催地グレード
4月7 ~10日DUNLOP KOBE OPEN兵庫県フューチャーズシリーズ
4月19 ~24日ジャパン・オープン福岡県スーパーシリーズ
4月21~24日飯塚オープン福岡県フューチャーズシリーズ
8月4~7日仙台オープン宮城県フューチャーズシリーズ
8月18~21日KANAGAWA OPEN神奈川県フューチャーズシリーズ
9月22~25日大阪オープン大阪府フューチャーズシリーズ

まとめ                                                                                    

今回は、国枝慎吾選手のウィンブルドン初優勝で再び注目を集めている「車いすテニス」の歴史、ルールや用具、大会スケジュールについて調べてみました。実際に、今回のウィンブルドン決勝の国枝慎吾選手の動画を見ましたが、2バウンドルールのためラリーのテンポはそこまで早くはありませんが、プレー中はずっと車いすをコントロールしていて動きっぱなし。テニス歴35年の私が見た感じでは、普通のテニスより車いすテニスの方が運動量が多いのではないでしょうか。テニスとはまた違った面白さがあり、国枝慎吾選手が優勝した瞬間は鳥肌が立ちました!車いすテニス界のレジェンドがいる日本国内で、車いすテニスがもっと人々の目に触れる機会が増えることを願っています。また日本国内から国枝慎吾選手に続く選手が現れることも楽しみにしています!